『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』著者:萬屋直人 イラスト:方密 レーベル:
電撃文庫
<あらすじ>
世界は穏やかに滅びつつあった。
「喪失症」が蔓延し、次々と人間がいなくなっていったのだ。
人々は名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失していく…。
そんな世界を一台のスーパーカブが走っていた。乗っているのは少年と少女。
他の人たちと同様に「喪失症」に罹った彼らは、学校も家も捨てて旅に出た。
目指すのは、世界の果て。辿り着くのかわからない。
でも旅をやめようとは思わない。
いつか互いが消えてしまう日が来たとしても、後悔したくないから。
記録と記憶を失った世界で、一冊の日記帳とともに旅する少年と少女の物語。
・設定 ★★★★★★★★☆☆ 8点
・ストーリー ★★★★★★★★★★ 10点
・文章 ★★★★★★★☆☆☆ 7点
・キャラクター ★★★★★★★★☆☆ 8点
・ギャグ ★★★★★★★☆☆☆ 7点
・シリアス ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点
・表紙 ★★★★★★★★☆☆ 8点
・挿絵 ★★★★★★★★★☆ 9点
・総評 ★★★★★★★★★★ 10点今まで読んだラノベの中でも3本の指に入る素晴らしい作品。
原因不明の「喪失症」によりゆっくりと滅んでいく世界をバイクで旅する、少年と少女のお話です。
2人の主人公も、存在が消えていく「喪失症」を発症しています。
いずれ消えゆく存在は、何を求め何を望むのか。
2人が選んだ道は、すべてを捨てて旅に出ることでした。
この小説で特徴的なのは固有名詞が登場しないところ。
2人の主人公はお互いを「少年」、「少女」と呼び合い、町や人に名前が存在しません。
それでも物語にまったく支障をきたしていない。
むしろ、そこから生まれるはかなげでふわふわしたものを作品へと取り入れています。
「滅び」、そして「消失」
暗いテーマですが、はつらつとした少年少女のおかげで明るい印象が感じられます。
クリアでさわやかな読後感もこの作品の売りのひとつです。
旅の過程で出会う幾人もの人々。
人の優しさや思いやりに、読んだあとは心があたたかくなります。
イラストも作風にぴったり。
文章にあらわれたやわらかい情景を、透明感あるタッチで描いています。
数年前の作品ですが、2巻の情報が出ていたり出ていなかったり。
ここまで続編を切望する作品はありません。
切なくて、楽しくて、あたたかくて、ほんのり寂しい。
文句なしの殿堂入り作品。
おすすめの一冊です。
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